完全上位互換(かんぜんじょういごかん)

あるカードが、下位となるカードに対してスペックが完全に上回っていること。
この逆が完全下位互換である。

完全上位互換の決め手となるのは『単体での性能がより優れている(上位互換)だけでなく、他のカードと組み合わせた場合も上位の働きをする』かどうかである。
具体的には、上位互換でありつつ種族が同じ、あるいは単体性能は相互互換だが同じ種族に加えて他の種族ソウル名称カテゴリを持つ、など。[1]
属する種族ソウル名称カテゴリが多ければ、その分だけ多くのサポートを受けることができるため、そちらの方がより優れているといえる。

他のカードよりも明確に強力なカードとして生まれてくるために、スペックが高いものが多い。
逆にいえば、完全下位互換となったカードには使い道がほとんど無くなってしまうため、完全上位互換の登場を快く思わないプレイヤーも存在する。

TCGではカードパワーは徐々にインフレしていく傾向があるため、新しいエキスパンションで古いエキスパンションのカードの完全上位互換が出ることは仕方のないことだろう。

完全上位互換の定義

完全上位互換という言葉の意味は、字面通りには「『完全』な上位互換であること」すなわち「あらゆる面で優れている」という意味になる。
これは先述の「他のカードと組み合わせた場合も上位の働きをする」と同義であり、より具体的には「他の自分のカードと組み合わせた場合」「相手によるメタがあった場合」にも上位の働きをするという意味である。

しかし、「完全上位互換」という言葉がこのままの意味で使われる事は稀である。
なぜならば、「別のカードとの兼ね合い、およびそれによる差別化細かいところまで追求するとキリがない」から、および「新しいカードの登場によってどんなカードでも差別化点が新たに生じうる」からである。

例1
より多くのメリット能力を持つ上位互換呪文を投入した場合、下位互換を入れている場合よりも《陽炎の守護者ブルー・メルキス》などの呪文横取りを使われた際の被害が大きくなりうる。
例2
《アクア・ティーチャー》《駱駝の御輿》などのバニラクリーチャーをサポートするカードが登場したため、それらは必ずしも、同コスト・同パワーで能力を持つクリーチャーの完全下位とは言えなくなった。《アクア・ビークル》に対する《アクア・エボリューター》などが例である。
バニラデッキでは通常下位互換とされるバニラを採用した方が、中途半端な能力を持つ上位互換よりも遥かに活躍の機会が多い。
例2-2
《神銃の精霊ナカツマキ》はスペック上は《光輪の精霊シャウナ》《流星の精霊ミーア》上位互換であり種族も勝るが、このクリーチャーが登場した時期は《ヘブンズ・ゲート》対策でブロッカー除去が隆盛していたため、「ブロッカーを持つ事がデメリット」という見方が強かった。
また、何かの完全上位互換だとしても「そうした存在自体が採用に値しないのであれば採用されない」という部分も忘れてはならない。例2では中途半端な能力を持つクリーチャーよりバニラのほうが優れる例が紹介されているが、大半のデッキではその底辺争いのカードはどちらも採用されない。《ナカツマキ》の境遇も同じである。
例2-3
TCG版の《魔刻の騎士オルゲイト》の性能に、そのままブロッカーをくっつけただけのデュエプレ版《魔刻の騎士オルゲイト》は「《火炎流星弾》で簡単に破壊できるようになったから、完全上位互換になったのとナーフが共存している」というネタがあった。実際、当時はブロッカー破壊を採用するデッキは少なくなかったので苦労して出してもあっさり破壊されてしまって連続攻撃できずに終わることはたびたびあった。
例3
《エナジー・Re:ライト》は一般的には《エナジー・ライト》の完全上位互換と呼ぶことができるが、《原罪の悪魔龍 グルデムボウ》などカード名を選ぶ効果で別のカード名として扱われる。
ツインパクトの登場によって、《グルデムボウ》で「《エナジー・ライト》」と宣言すれば《叡智の聖騎士 スクアーロ/エナジー・ライト》込みで山札の上から5枚の手札補充をすることが可能であり、その動きは《エナジー・Re:ライト》では実現できない。
例4
《緑神龍ガラギャガス》《緑神龍グレガリゴン》は、その2つだけで比較したら相互互換になるが、《スーパーしりとりガー》が登場したことによって、《ガラギャガス》が誤差レベルで「完全上位互換」と呼べる優位性が生まれた。
では《グレガリゴン》はあらゆる場面で《ガラギャガス》より劣っているかとなるとそうではなく、自分の墓地に《黒神龍グールジェネレイド》がある状況下なら、相手に《しりとりガー》の「ん」メタを発動されたら《グールジェネレイド》を出すことができるという誤差レベルで《ガラギャガス》にはないメリットが生ずる可能性がある。
その先も考えようとすれば考えられるだろうが、いずれにせよキリがない。
その他の例(特殊な条件下で差別化)
+  折返し

以上のことから、未来永劫、本当の意味で完全上位互換である・あり続けるカードは存在しないと思ってもらって差し支えない。

このため、完全上位互換という言葉をそのままの意味で使うことができるケースは極めて少なく、仮に使われる場合は、

  1. 他の『自分の』カードと組み合わせた場合も上位の働きをする」(「相手によるメタがあった場合」の差異を考慮しない)
  2. 上位互換の優位性を覆さない範囲で上位の働きをする」(より高いコスト・より低いパワーのカードをサポートするなど、下位互換の方がサポートを受けられるような能力の存在を考慮しない。あるいは、単純に種族などの数だけで優っている)

のいずれかの意味を暗黙的に含んでいることが多い。
それでもデッキビルディングの際には、こう評されることのあるカードを覚えておいて損はない。

完全上位互換とされやすいカードの例

全体的にスペックが勝っており、劣る部分も限定される例

単体スペックおよび相手の使うカードの影響で劣る部分が確認されていない例

その他

参考


[1] かつては『能力コストパワーなどから見て上位互換であることに加え、種族まで同じ(あるいは、より汎用性の高い種族に置き換わっている)』ことが完全上位互換の判断基準だったが、ソウル名称カテゴリなどを参照するカードが登場してきたことにより、種族だけを判断基準とする線は弱くなった。