GR・マスターズ
超天篇中期から十王篇初期にかけて、GRクリーチャーとそれをGR召喚するカードによって、対話拒否が繰り広げられた環境のことを言う。DMRP-11期に《BAKUOOON・ミッツァイル》がGRクリーチャーと猛威を振るっていたため、ミッツァイル・マスターズとも呼ばれていた。
その惨状は公式自らも「失敗」だったことを認めるほどだった。
GR・マスターズの変遷
事の発端は、DMRP-11から。
DMRP-11では、ハイスペックなマナドライブ5、6を持ったGRクリーチャーが続々と登場。
マナドライブの条件を満たしていなければただのバニラ同然のクリーチャーたちだが、ひとたびマナドライブの条件を満たせば、従来のコスト論を遥かに上回るアドバンテージを叩き出せるようになる。
そうしたGRクリーチャーを大量展開できるクリーチャーとして最初に採用されたのが、《BAKUOOON・ミッツァイル》。
DMRP-11以降は、この《BAKUOOON・ミッツァイル》と上記の大型GRクリーチャーによる対話拒否を引き起こす様々な型の【ミッツァイル】が構築された。
元々、DMRP-09に登場した《BAKUOOON・ミッツァイル》は、登場当時から味方にスピードアタッカーを付与することもできる高いカードパワーを誇っており、DMRP-11以前のバニラかもしくはそれに近いスペックのGRクリーチャーを並べるデッキであっても、それだけで環境のトップメタの一角に立てるほどの力があった。
そこに、マナゾーンのカードが6枚以上揃えば、cipで3枚ドローができる《天啓 CX-20》、コスト5・6のクリーチャーの踏み倒しができる《ダダダチッコ・ダッチー》・《マリゴルドIII》が参入。こういった強力なクリーチャーを早期かつ一撃で大量展開できるとなれば、そのカードパワーが環境を容易に荒廃させるレベルに達することは必然であった。
《ミッツァイル》はGR召喚能力持ちのカードの中では非常に汎用性が高く、更にフィニッシュまでに要するターンが非常に少ないため、ビートダウンからコントロールまで非常に多くのデッキで採用することが可能だった。
逆に、余りにも手軽に使用できることから、【ミッツァイル】に不利な初動の遅いビッグマナの多くは軒並み環境から駆逐されて姿を消してしまった。それらのデッキはその遅さをカバーするためにS・トリガーを多めに積む事が少なくないが、厄介な事に【ミッツァイル】は単騎ラフルル等のカウンターケアを持ち合わせている事も多かったため、尚更対策が困難だった。終いにはマイナーになったビッグマナにすら《ミッツァイル》が取り入れられることもある始末であった。
ミッツァイルの主軸であるGR召喚はメタカードが非常に少ない上に、肝心の数少ないメタカードも機能する前に殴り切られてしまう事が多く、更にそのメタカードも【ミッツァイル】同士のミラーマッチ対策にデッキへ取り込まれていった。代表的な例には、《機術士ディール/「本日のラッキーナンバー!」》と単騎ラフルルがある。これらのロックによって、S・トリガーを始めとしたデュエル・マスターズの逆転要素を完封したうえで1ショットキルが安定して行われるため、相手は文字通り何もできずに負けてしまうことも多かった。
こうした対戦環境目線で見た不健全さはとどまる所を知らなかった。
なお、当時は《ミッツァイル》のカードパワーが元から高いこともあって、プレイヤーの非難はGRクリーチャーではなく、《ミッツァイル》に向けられることが多かった。そういうこともあってか、当時は「ミッツァイル・マスターズ」と呼ばれた。
最終的に《BAKUOOON・ミッツァイル》本体と、【ミッツァイル】のループパーツに使われた《機術士ディール/「本日のラッキーナンバー!」》が2020年1月1日付で殿堂入りが決定した事で、約三ヶ月に渡るミッツァイル・マスターズは幕を降ろした。しかし、《ミッツァイル》が殿堂入りした後もGRクリーチャーたちの暴走は終わることはなかった。
《ミッツァイル》が殿堂入りしてからしばらくは、環境は少し落ち着くかのように思われた。しかし、次は《ミッツァイル》1枚と、《ミッツァイル》への依存度の低い《MEGATOON・ドッカンデイヤー》4枚を投入した構築である【ドッカンデイヤーミッツァイル】がCS環境を席巻した。また、これに次いで【バーンメアジョーカーズ】も環境上位に食い込み、ついには【ドッカンデイヤーミッツァイル】から《ミッツァイル》自体を抜いた【ドッカンデイヤー】がCS上位入賞を果たした。これにより、《ミッツァイル》だけの問題ではなく、そもそもGRというシステム自体がこの環境の不健全さを生む温床なのではないか、という指摘も発生し始めた。
やがて、DMRP-12で登場した《ヨミジ 丁-二式》が、《ミッツァイル》にも《ドッカンデイヤー》にも頼らずに【ヨミジループ】という専用デッキを形成し、その一種である【白黒緑ヨミジループ】がチャンピオンシップで4位以内入賞を果たしたことで、前述の指摘は見事的中。GRそのものを禁止にすべきという声や、「ミッツァイル5枚制限」(《ドッカンデイヤー》4枚+《ミッツァイル》1枚)と揶揄する者も出現しはじめた。
結果として殿堂入り後も環境が落ち着くどころか、ループパーツではあるものの同時にGRメタでもあった《機術士ディール/「本日のラッキーナンバー!」》も同時に殿堂入りさせたことが完全に仇となり、むしろGRの暴走は加速したとも言える事態になった。
そして、DMEX-08発売以降も【バーンメアジョーカーズ】、【ドッカンデイヤー】は引き続き環境トップに君臨し、GRを使った対話拒否が引き続き行われ続けた。
ここでようやく、多くのプレイヤーや開発陣がGRクリーチャーのカードデザインに問題があると気付き、それを揶揄してこの環境は「GR・マスターズ」と呼ばれるようになる。
十王篇に突入したDMRP-13では、GRクリーチャー、オーラは一切収録されず、逆にGRメタとなる《U・S・A・BRELLA》や《リツイーギョ #桜 #満開》が収録されるなど、GRの鎮静化を図る姿勢が強く見られた。
しかし、上記2枚のメタカードへの対抗策も【バーンメアジョーカーズ】などでは講じられており鎮静化には至らなかった他、コロコロ公式ページ及びコロコロチャンネルでは同パック収録の《不敵怪人アンダケイン》を用いた【友情カラフルアンダケイン】が研究仙人まつがんによって解明されたりもしているため、やはりそもそもがオーバースペックなマナドライブ持ちGRクリーチャーが殿堂入り等しないことには収まらないと思われた。
結局DMRP-13発売後早々、チャンピオンシップで無情にも【ドッカンデイヤー】の優勝・入賞報告が大半を占めることになった。
GR・マスターズの終焉
そして、2020年7月1日付で後継の《MEGATOON・ドッカンデイヤー》が殿堂入り、GRクリーチャーの中でも特に凶悪と評された《マリゴルドIII》、《ヨミジ 丁-二式》がどちらも一発プレミアム殿堂となった。
GRメタに関しても、更に《「戒律の大弓」》や《DORRRIN・ヴォルケノン》、《ドラグ変怪》、《ワナビーワラビー》などが登場している。
さらに2021年1月1日からは、GRクリーチャーが一切使えない新フォーマット「オリジナル」が開始。加えて《とこしえの超人》など更に強力なメタクリーチャーも登場したため、GRクリーチャーが環境を席巻するような事態は見られなくなった。
【バーンメアジョーカーズ】はその後も環境で活躍し続けたが、《マリゴルドIII》を失って弱体化してからは、強いデッキの1つで収まっている。
アビス・レボリューションまで世代が進むと、GR関係の新規カードも殆ど登場せず、そもそもGR召喚というギミックを狙って使うカードは《“魔神轟怒”万軍投》と《手札の儀》ぐらい。
一応、《ラッキー・ダーツ》か《暴発秘宝ベンゾ/星龍の暴発》経由の即死級呪文に《煌銀河最終形態 ギラングレイル》はあるが、【星龍ライベルモット】でもそれが不採用の構築が少なくない上、そもそも上振れ札の域を出ないので環境を荒らしてはいない。
オリジナルで使用不可かつアドバンス特有の環境デッキといえば《最終龍覇 グレンモルト》または《爆炎龍覇 モルトSAGA》または《最終龍覇 ロージア》のいずれかを利用したドラグハート系、【ムザルミ天門】、【ドルマゲドンX】、《伝説の禁断 ドキンダムX》バイク、《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》/《蒼き覚醒 ドギラゴンX》を自然と採用できるあれこれ……と超次元ゾーンとゲーム開始時にバトルゾーンに存在出来るカードが主流となり、ガチデッキがブラフ枠埋めとして《メタルポンの助》を12枚採用するのも珍しくなかった。
その後の活躍
『全国大会2023』では、秘匿されていたデッキに《卍夜の降凰祭》が存在した。《堕魔 ドゥザイコGR》を無月の門のリソースとしつつ、最終的に《龍月 ドラグ・スザーク》のcipから《ツタンメカーネン》のループでライブラリアウトさせるコンボデッキであり、久しぶりにGR戦術をメインプランに組み込んだデッキが認知されることとなった。
『DMGP2024-1st』Day1個人戦(アドバンス)で3位入賞の【青黒緑DOOM墓地ソース】も超GRをメインギミックに入れていた。《スゴ腕プロジューサー/りんご娘はさんにんっ娘》と《復活の祈祷師ザビ・ミラ》、《勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th》をループさせて《ツタンメカーネン》でフィニッシュする。
その後も時折GRを採用したデッキが環境に進出することはある。
GR・マスターズの問題点
特定のカード、デッキが環境を支配するだけであれば、これまで17年間以上続いたデュエル・マスターズではよくあったことだが、それでもGR・マスターズ環境は一線を画した。
【ミッツァイル】と【ドッカンデイヤー】はループに入ることが多く、上手く回ればゲーム開始から最速3、4ターン目にループによる対話拒否が始まることが一番の問題点だろう。ゲーム開始から《ミッツァイル》や《ドッカンデイヤー》が着地するまでの時間よりも、ループ時間の方が遥かに長くなり、負けた方はほとんど何もしていないのに相手がループするのをひたすら見るだけで終わってしまうことも多い。カードをまだ1,2回しか使っていないのに、ループだけを見せられて負けるという理不尽さを叩きつけられる事例は後を絶たない。実際の試合時間をみれば、コントロール同士の戦いよりは短いが、試合の大半をループに奪われるため、ループに入るまでの時間の短さも相まって体感的にはゲームがとても長く感じてしまう。ループしている方も、対戦ではなく半ば作業になってしまうため、対戦ゲームとしての機能がほとんど失われていた。
大量展開するデッキにありがちな全体除去に弱い点も、各種ループの過程で相手をロックしてカバーでき、それらを確保出来ない場合も《ミッツァイル》や《ドッカンデイヤー》も複数体並べればある程度ケアすることが可能な点も凶悪だった。
なにより問題だったのは、当時はGRのメタカードが少ないことであった。「コストを支払ったものとして召喚する」GR召喚の前では、大抵のコスト踏み倒しメタが機能せず、前述した通り、数少ないGRメタの《「本日のラッキーナンバー!」》も、【ミッツァイル】のループパーツに使われるという有様だった。
《「本日のラッキーナンバー!」》が殿堂入りした後に環境で猛威を振るった【ドッカンデイヤー】と【バーンメアジョーカーズ】では、《「本日のラッキーナンバー!」》がループパーツとして悪用されることはなかったため、完全に悪手だったと言える。
しかも、問題は対戦環境だけでなく、デッキの構築費用にもかなり問題があった。
【ミッツァイル】も【ドッカンデイヤー】も【バーンメアジョーカーズ】も、構築費用が家庭用ゲーム機1台とゲームソフト1本買える以上の値段に達することもあり、その中の高額カードのほとんどが超天篇で登場したばかりのカードなので、古参ユーザーも新規ユーザーと大差ない構築費用を要求され、これまで培ってきた資産が環境に否定される状態になってしまった。さらに掘り下げれば、この資産ゲーの問題は双極篇の時から続いていており、2シリーズに渡って資産ゲーが全く改善されていない状態であった。
ここまでGR環境が激化したのは、DMRP-11以降のGRクリーチャーのカードパワーが高すぎることが真っ先に指摘されるが、こうなってしまったのには以下の理由が考えられる。
1つ目の理由としては、GRクリーチャーに個性を持たせたかったというのが1番大きいと思われる。GRを使ったデッキはビートダウン向けの【ミッツァイル】、【ガンバトラージョーカーズ】が主流であり、基本的に打点としての運用が基本だった。オレガ・オーラのデッキでも、オーラがメインでGRクリーチャーはそのための媒介という主な役割で、GRクリーチャーの能力に焦点を当てられることはあまりなかった節がある。
要はGR召喚にガチャ特有の「何が捲れるか…」というハラハラドキドキを感じる局面は少なかったのである。
結局強化しても「欲しい物が出るまでGR召喚を続ける廃課金プレイ」「何が出ても良い方向に転ぶ確定ガチャ」となり、スリルは無かったが。
2つ目の理由は、重量級マナドライブ持ちのGRクリーチャーはコントロールを意識してデザインされたこと。マナドライブ持ちのクリーチャーは、マナドライブが発動していなければ、通常のGRクリーチャーにスペックが劣るため、ビートダウン向けのGRクリーチャーとコントロール向けのGRクリーチャーの棲み分けを図ろうとしたこともうかがえる。
そして、《BAKUOOON・ミッツァイル》はどちらかと言えばビートダウン向けのスペックなので、重量級マナドライブと共に使われることは想定していなかったと思われる。
さらに来たるDMRP-12では、DMRP-11での反省を全く見られないような強力なマナドライブ能力を持ったGRクリーチャーが多数登場している。これは、製造日までにカードのデザイン変更が間に合わなかったことも考えられるが、そうでないとしたらGRの暴走の主な原因が《BAKUOOON・ミッツァイル》にあると判断された可能性が高い。そう思われる理由としては、DMRP-12のマナドライブはすべて自壊能力を持っているからである。要は《BAKUOOON・ミッツァイル》の召喚時の破壊効果で悪用されないようにしたと推測できる。
しかし、それはGRクリーチャーに自力で再びGR召喚でバトルゾーンに出てこれる機会を与える結果となっただけであり、《ヨミジ 丁-二式》も自壊能力がなければループすることはほぼなかったため、悪手でしかない。
ここまで来れば流石に開発陣も懲りないわけがなく、新規のGRクリーチャーが収録された最後のエキスパンションとなったDMEX-08では、そのようなマナドライブ能力を持ったものは一切収録されず、逆に《奇跡の長男 おそ松》などのガチデッキで採用しにくいものばかりが多く目立つようになった。
補足
ただ、GR・マスターズは、決してGR一辺倒な環境だったという訳ではない。
【カリヤドネループ】、【ロマノフシャコガイル】、【アンダケインドルマークス】、【ダッカルパラノーマル】、【赤単ブランド】、【サンマックス】など、対抗できるデッキはあった。
【ミッツァイル】全盛期だったDMGP-9thでは、【赤単ブランド】が準優勝、【カリヤドネループ】は優勝を飾り、【ミッツァイル】はベスト8に1人残った程度の結果となった。
しかし、こうした対抗デッキも、速攻デッキや、最速3、4ターン目にループやロックを決めるデッキに限られており、ビッグマナやその他のコントロールデッキでは大体太刀打ちできず、環境で活躍できるデッキの幅を著しく狭めていたことには変わりはない。王来篇環境で【5色コントロール】(特に【5色ザーディクリカ】)や【5色蒼龍】が環境に台頭できたのも、GR・マスターズが終わりを告げたからであるのは確かだろう。
また、【カリヤドネループ】、【アンダケインドルマークス】、【ダッカルパラノーマル】も、GR関係なしに環境に悪影響を与える壊れデッキであったため、環境を荒らさないデッキでGRに対抗できるデッキは、速攻デッキのみだった。このことから、やはり不健全な環境であったことは自明である。現在は、これらの3つのデッキも殿堂レギュレーション改訂によって弱体化している。
- Deadmanは「いくら強力なカードでも十分に使われる機会を得ていないカードは制限しない」という意向を発表しており、実際王来篇では新型コロナウイルスの影響もあり例年よりも規制された枚数は少なかった。にもかかわらず「発売から半年程しか経っておらず、その期間中も大会中止が相次ぎ十分使われていない」状況でプレミアム殿堂という判断が下された辺り、超GRがどれ程重く見られていたかが窺える。
- Deadmanは後に、《BAKUOOON・ミッツァイル》は想定通りの動きをしたとしながら「GRクリーチャーを自壊対象に選べるようにしたのがDMRP-11期以降響いてしまった」「ランダムだから許されるはずだったカードパワーが膨大な試行回数によって許されなくなってしまった」という趣旨の弁を述べている。
参考