インフレ経済用語「インフレーション(inflation)」の略であり、本来の意味は「物価が持続的に上昇すること」である。 クリーチャーの場合、パワーが大きくなると言っても、《無頼勇騎ゴンタ》の様な「2コストでバニラのパワー4000のクリーチャー」の登場を指してインフレとは言わない。 つまり、バニラ並みのパワーを維持しながら強力な能力を得ており、かなり高いスペックとなっている。こういった現象が多くのカードで見受けられる場合に、インフレが起こっていると言われる。 基本的にクリーチャーは、パワーの高さよりも能力の強さが求められるので、パワーだけが独り歩きしてインフレしていくことはない。たまに、《緑神龍ディルガベジーダ》や《界王類七動目 ジュランネル》のようにコストに反して、逸脱した高いパワーを持つ者もいるが、《緑神龍ディルガベジーダ》の場合は強力な能力を持たない分をQ・ブレイカーや高パワーに回したり、《界王類七動目 ジュランネル》はデメリット能力がついていたりするので、やはり能力のインフレありきのパワーの高さと言える。 派手でオーバーキルなカードを引き合いに出してインフレを説明することがあるが、それは適切ではない。例えば、《グラディアン・レッド・ドラゴン》のパワーが高いのはインフレによるものではない。10コストと非常に重く、T・ブレイカー以外の能力を持たないためにこのパワー設定なのである。カードパワーの判定には、コストパフォーマンスに着目するべきである。 コストが高いカードほどインフレが目立つ傾向にある。クリーチャーの場合、ファッティクラスになるとパワーと能力の両方に凄まじいインフレが起きている。それが顕著にみられ始めたのがゼニスや《勝利宣言 鬼丸「覇」》が登場したエピソード2である。 コストが低いカードはインフレが起きにくい傾向にあり、《異端流し オニカマス》を初めとするコスト2の踏み倒しメタが登場したのは新章デュエル・マスターズに入ってからであった。 マナブーストもコスト論での査定が+2である事自体はずっと変化しておらず、手を変え品を変えて《フェアリー・ライフ》もどきが登場し続けているものの上位互換は未だに存在しない。 コスト1のクリーチャーはそれ自体がメリットという例外的な存在であり、大きなインフレは起きていない。 初期の頃は、何かしらの能力を持ったクリーチャーは、コストに対してパワーが低くなることがあったが、次第にコストに見合ったパワーを維持、もしくはそれを上回るパワーを持った上で、強力な能力を持っていることが多くなった。そういう観点からみると、パワーの方がインフレしているとも言える。パワーを参照する《炎槍と水剣の裁》がプレミアム殿堂から無制限になったことからも、それが見て取れる。 インフレをしているのはクリーチャーだけでなく、呪文も同じである。呪文はパワーを持たないので、なおさらマナコストに対する能力の強さを引き合いに出してインフレを語られる。 ただし、母なる系やリアニメイトのようなコスト踏み倒しは「クリーチャーとの相乗効果で威力を発揮する」タイプのカードである。クリーチャーのインフレに伴って自身のカードパワーが飛躍的に上昇する性質のため事情が変わり、時代と共に規制と調整版の追加が行われるケースがある。 例えば、《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》は《インフェルノ・ゲート》でリアニメイトして使うのが強力すぎることが原因の1つとなり、登場から1年以内でプレミアム殿堂となった。《インフェルノ・ゲート》もまた後に殿堂入りを経てプレミアム殿堂に指定される強力なカードであったが、その時点ではリアニメイトして強力すぎるといえるクリーチャーが《サファイア》くらいだったので、何年かは規制を免れていた。 クリーチャーや呪文以外の、短期間しか登場しないカードタイプではインフレはほとんど見られない。最もGRクリーチャーのような例外も存在する。 環境におけるインフレ聖拳編最初に大きくインフレしたと言われるのは聖拳編。初の多色推しシリーズであり、《無双竜機ボルバルザーク》や、後の環境でも通用するスペックを持つ《英知と追撃の宝剣》,《魂と記憶の盾》がこの時期に登場した。 極神編2度目の多色推しシリーズの極神編もインフレが発生したシリーズと言われており、《龍仙ロマネスク》,《聖鎧亜キング・アルカディアス》,《ボルシャック・大和・ドラゴン》,《封魔妖スーパー・クズトレイン》,《スーパー・スパーク》,《ダイヤモンド・ソード》などがこの時期に登している。
戦国編戦国編ではバニラの割合が少ないこともあり、全体的なカードパワーが上昇。 覚醒編サイキック・クリーチャーが出現してからは一層激しいインフレに見舞われた。既存のコスト論を大幅に逸脱したサイキック・クリーチャーは環境を激変させ、後のカードデザインにも影響を与えることとなった。「5コストで、アドバンテージを稼ぎながらフィニッシャーや複数のウィニーを繰り出す」動きは、それまでメタゲーム上にいた【ボルメテウスコントロール】がファンデッキと化すほどのゲームの高速化を招いた。 エピソード1主に軽量級カードのインフレが目立ち、既存カードの完全上位互換、上位互換が多数輩出された。 エピソード2軽量級のインフレした前シリーズに続き、今度はゼニスやアンノウンを中心に、ファッティのインフレが目立つ。ゼニスは10マナ以上の大型しか存在しない代わりに、召喚さえすれば絶大なアドバンテージを得られたため、【ターボゼニス】が生み出された。《勝利宣言 鬼丸「覇」》、《偽りの王 ヴィルヘルム》などもこのシリーズ出身で、インフレの象徴とも呼べるグッドスタッフが多数登場し、【ミラクルとミステリーの扉】が成立した。 ドラゴン・サーガ新ギミックのドラグハートが登場。《銀河大剣 ガイハート》は《熱血星龍 ガイギンガ》に龍解すると対処が難しいアタッカーとなることで猛威を振るった。攻撃可能なクリーチャーが1体でもいれば《龍覇 グレンモルト》を出すだけで《ガイギンガ》が殴りかかってくるといるゲーム展開を生み出し、ゲーム中盤からの高速化を招いた。シリーズ終盤に登場した《超戦龍覇 モルト NEXT》も単体で1ショットキルを狙えるという爆発力からトップメタに躍り出た。その他のカードもカードパワーが高いものが多く、環境のインフレが進行したと言われる。 革命編ドラゴン・サーガから続くインフレはとどまるところ知らず、それどころかさらに激化したシリーズ。 S・トリガーにインフレし、これまで定番のS・トリガーであった《アクア・サーファー》を一気に過去のカードにした。 革命ファイナル多色プッシュということもあって、さらにインフレ。ドラゴン・サーガから3シリーズに渡る過度なインフレは、既存のコスト論を完全に崩壊させた。 新たなコスト踏み倒しとなる革命チェンジが登場し、侵略と共にインフレ・高速化を象徴する能力としてデュエマの歴史に大きな影響を与える。 新章デュエル・マスターズ〜双極篇
超天篇新たなゾーンである超GRおよび新タイプのクリーチャーであるGRクリーチャーが登場。当初は準バニラに近い性能のものが中心でそこまで環境で暴れた訳ではなかった。だがDMRP-11にてマナドライブ5、6のGRクリーチャーが多数登場。1枚で何枚分ものアドバンテージを稼げるカードが登場したために、今度は超GRによる過剰なインフレが生じる。《BAKUOOON・ミッツァイル》と、それによって大量召喚されたGRクリーチャーによる一方的なソリティア・ループが行われた(ミッツァイル・マスターズ)。その後、《ミッツァイル》が殿堂入りしたが、次は《MEGATOON・ドッカンデイヤー》と《バーンメア・ザ・シルバー/オラオラ・スラッシュ》がGRクリーチャーを用いた一方的なソリティア・ループを行う後継者となった。結局のところ、メインデッキのどのカードが規制されようとも、GR召喚による数とカードパワーの暴力は沈静化は見込めなかった。ここまでくると、もはやインフレではなく調整ミスと言った方が良く、GRそのものを廃止すべきという声が上がるほどまでになってしまった。 十王篇再度多色カードがプッシュされ、単色、多色共に、純粋なカードパワーの底上げが目立った。しかし、それは超GRを考慮しなければの話であり、依然として超天篇のカードによるGRクリーチャーを用いたソリティアが続いていた。GRのメタカードである《U・S・A・BRELLA》、《リツイーギョ #桜 #満開》も登場したが、《斬罪 シ蔑ザンド》や《闇鎧亜ジャック・アルカディアス》などで容易に対処でき、GRの軍勢を止める抑止力としては弱かった。結局、十王篇はカード単体で見ればインフレはしているが、総力でみればGRのインフレを上回ることができないでいた。DMRP-13発売からしばらくすると、【アンダケインランデス】、【ダッカルパラノーマル】といったGRは使わないが、GRのソリティアを上回るスピードでワンサイドゲームに持ち込める強力なデッキも考案されたが、これらもゲーム性を脅かすものだったため、根本的な解決にはなっていなかった。また、DMBD-14が発売されると、《ヘブンズ・フォース》により《爆龍覇 ヒビキ》《爆熱剣 バトライ刃》を使い、最速2t目に《最終龍覇 グレンモルト》や十王編後半には《∞龍 ゲンムエンペラー》といった強力なドラゴンを出す【白黒赤ドラグナー】が環境トップに躍り出た。ヘブンズフォースを引いていれば最速2t目にゲームの決着がつくのに対し、十王編時点では1コストのメタクリーチャーは存在しなかったため、ドラグナーを使わないプレイヤーは先攻を取って2t目にメタカードをプレイしなければいけないという【“轟轟轟”ブランド】以上のスピード感の試合をさせられていた。また、相手のヘブンズフォースに間に合わせるために、相手より早くヘブンズフォースで《Q.Q.QX./終葬 5.S.D.》などの簡単に処理されないメタクリーチャーを出したり《緑知銀 ダッカル》や《「策略のエメラル」》でシールドに《凄惨なる牙 パラノーマル》を表向きで置したりなどのゲームエンド級の動きを先に押し付ける戦法が流行し、数多のデッキがこの「ヘブンズフォースを使われる前にヘブンズフォースを使う」といった「ヘブフォマスターズ」と揶揄されるほどの高速環境があった。その後、7月1日に《MEGATOON・ドッカンデイヤー》は殿堂入り、《ヨミジ 丁-二式》、《マリゴルドIII》が一発でプレミアム殿堂したことにより、GRによるソリティア環境、12月18日に《ヘブンズ・フォース》や《爆熱剣 バトライ刃》の一発でのプレミアム殿堂は終わり、DMRP-11から続いていた過剰なインフレ環境、DMBD-14から続く類を見ないほどの高速環境から脱却できたのであった。 王来篇〜王来MAX
ゴッド・オブ・アビス〜
インフレとデュエル・マスターズトレーディングカードゲームのエキスパンションが進むにつれてインフレが進むのは当然のことである。カードの性能がどんどん上がっていかなければ、新しいパックを購入する意義もなくなってしまう。既存のカードと同じかそれを下回るスペックのカードをわざわざ買ってまで使おうとは思わないだろう。時として過去のカードの完全上位互換が収録されることもそれを示唆している。 インフレによって古いカードの利用価値が下がる現象は、デュエル・マスターズに限らず多くのトレーディングカードゲームで見られる。古参プレイヤーには少々酷だが、時には新しいカードの進歩に着目するのもいいだろう。しかし、過度なインフレの進行はプレイヤーに絶え間ないカードの買い替えを要求したり、多くのカードの価値を失わせてしまう事になる。こうなると販売店にもプレイヤーにも不利益を招くので、開発側もカードデザインには細心の注意が要求される。 昔はかなり強力だったのに今は見る影もないというカードもザラにある。過去に一度デュエマを辞めて、復帰した時にそれに驚愕した経験がある者もいるだろう。 ただし、インフレしたからと言って、すべてのカードが使い物にならなくなっていくわけではない。新しく登場したカードとのシナジーが見いだされたり、新登場したギミックのメタとして注目されたり、デメリットや高コストを踏み倒す手段が登場したりして、インフレとは関係なしに評価を上げたカードも多数存在する。 デュエル・マスターズ プレイスではプレイスでは、サービス開始当初はTCG版の黎明期とほぼ同じコスト論に則っていた。 インフレが目立ち始めたのはサービス開始からわずか4か月後のDMPP-03から。DMPP-03~DMPP-04では聖拳編を中心に多数のカードが収録されているが、全体的に聖拳編よりも多色単色問わずカードパワーの向上が目立つ。 コスト6で自分の火のドラゴンが1体いるだけでスピードアタッカーのT・ブレイカーになれる《神滅竜騎ガルザーク》、4コストで容易にパワー12000以上のT・ブレイカーになれる《無敵悪魔カースペイン》、手札補充と擬似アンタップマナ生成で大量展開の起点となる《ダイヤモンド・ブリザード》、TCG版より能力はほぼそのままで5コストになった《アルティメット・ドラゴン》、7コストでしかも《ヘブンズ・ゲート》で出せるクリーチャーでありながらパワー18000のQ・ブレイカーになれる《剛撃聖霊エリクシア》などなど、極神編に迫るほどのパワーカードが続々と登場した。コスト論以上のパワーを持つ《無敵悪魔カースペイン》、《アルティメット・ドラゴン》でさえも、準バニラであったため大した活躍はできなかった。 DMPP-05、DMPP-06では、《神滅翔天ザーク・ゼヴォル》、《聖騎士ヴォイジャー》、《邪霊神官バーロウ》など、デッキのサポートとなるカードにもインフレの影響が見られる。 DMPP-07のフェニックス群は下準備こそ必要なものの、早ければ4ターン、安定して5,6ターン目に着地しながら各種除去、S・トリガー耐性を得る《超神星ヴィーナス・ラ・セイントマザー》や《超神星マーキュリー・ギガブリザード》、アタックトリガーでシールドを全てブレイクする《超神星アポロヌス・ドラゲリオン》と、(幾らデフレ期の不死鳥編とはいえ)TCG版と比べて凄まじいインフレを起こしており、それ以上の速度を持てない、またはそのターン域で妨害できないデッキは活躍することが難しくなっている。 その後、New DivisionとAll Divisionの分離、主なプレイヤーのNew Divisionへの移行もあり、TCG版のインフレの原因である、カードの買い替え需要がインフレに頼らずとも発生。これにより、DMPP-07(不死鳥編)のデッキである【グレートメカオー】 (デュエプレ)が2年後のDMPP-17(エピソード1)でも変わらず活躍し続ける等、過剰なインフレは抑えられる結果となった。 TCG版で殿堂入り、プレミアム殿堂になったカードはほとんどが弱体化調整されて登場している。一方、DMPP-15以前ではそうでないカードは全体的に同時期のTCG版よりかなり高いカードパワーを持つ傾向にあった。DMPP-16〜DMPP-18においてはTCG版のインフレが進んだこともあり、そうした傾向は見られなくなっている。 参考
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